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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.114)

Face to Face Talk【今月のインタビュー】



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  自然と遊ぼう 緑と歩こう 
 富士自然観察の会  小澤 緑    




 国道一号バイパスを富士から沼津へ向かう途中に見える、眩しいほどの緑。「浮島沼(うきしまぬま)」と呼ばれる広大な湿地帯であった頃の名残を伝え、葦(あし)が生い茂るこの一帯が浮島ヶ原自然公園だ。春から夏にかけて園内の木道を歩けば、サラサラとそよぐ葦の群落の中に迷い込んだかのような心地良い情景と、点在する可憐な草花に出会える。大型トラックが行き交う日本の大動脈のすぐそばにありながら、自然の息吹を肌で感じられる別世界だ。
 この浮島ヶ原自然公園のガイド役を担当する市民団体『富士自然観察の会』の中心的メンバーである小澤緑さんは、自然観察会や環境学習指導などの活動で年間100日以上もフィールドに立つというパワフルな人物だ。屈託のない笑顔で語るのは、身近な自然に秘められた魅力と、多くの子どもたちに伝えたい思い、そしてその先に目指す活気ある地域の姿だった。




バイパス沿いに残された 希少植物の宝庫FacetoFace114top2
サワトラノオ



浮島ヶ原自然公園とはどんなところですか?

 「ひと言でいうなら、湿地の動植物と触れ合い、親しめる場所です。浮島ヶ原自然公園は絶滅危惧種のサワトラノオという植物が発見されたことをきっかけに整備された施設で、季節によって変化する景観や生き物の姿を見ることができます。基本的に木道の外は立ち入り禁止ですが、自由に歩ける広場やベンチもありますので、自然観察や撮影が目的の人も家族連れでのんびり過ごしたい人も、それぞれの楽しみ方があります。バイパスのそばにこんな場所があったなんてと、初めて来た人には驚かれることもありますが、インターネットで情報を得た野草愛好家や研究者が遠方から訪れることも珍しくありません。シンボルフラワーでもあるサワトラノオは現在2,000株以上が確認されていて、日本一の自生地といわれています。その他にもヒキノカサやノウルシなど、全国的にも貴重な植物が数多く自生しています。その一方で外来種による脅威もあって、秋に黄色い花をつけて繁茂するセイタカアワダチソウや、動物ではアメリカザリガニやウシガエルなど、本来の生態系を狂わせてしまう生物への対応も課題になっています。地域住民の皆さんやこどもエコクラブ、企業などが行政と協働しながらセイタカアワダチソウを抜く駆除作業を進めていて、アメリカザリガニに限っては駆除を目的とした釣り遊びが許可されていますが、釣った後は最後まで責任を持って飼うことや、他の場所に放流しないことなど、自然環境を守るためのマナーも合わせて周知しているところです。」



それらの活動を行っているのが、小澤さんの所属する富士自然観察の会ですね。

 「富士自然観察の会はその名の通り、富士市内を中心に自然観察会などを開催している市民団体です。年間約15回の観察会や市内のこどもエコクラブの観察会への講師派遣、幼稚園や小中学校での自然教室指導などを行っています。また土日祝日には富士市からの委託で浮島ヶ原自然公園の来園者へのガイドも担当しています。今年は園内の動植物を紹介したガイドブックも制作・発行しました。会員が撮りためた写真に解説やコラムを加えたもので、富士市内の図書館やまちづくりセンターなどに寄贈しているほか、一部の書店でも取り扱っています。自然ガイドや講話では年配の方が対象になることが多く、皆さん勉強熱心なので詳しい知識や話題を求められますが、このガイドブックはそれに応えるテキストとしても使えるように構成されています。とはいえ自然観察会に参加する上での条件や資格は特にありません。実際の参加者も2歳~80歳とものすごく幅が広いんですよ。身近な自然に興味のある方は、まずは気軽に観察会の見学に来てもらえると嬉しいです。」



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ヒキノカサ

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アオサギ

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『浮島ヶ原自然公園ガイドブック』
(頒価500円・税込)




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 自然の中には 無数の遊びが隠れている




小澤さんが自然と関わるようになったきっかけは?

 「花が好きだった母の影響もあって、幼い頃から自然の中で遊ぶことが大好きでした。また、父と一緒に近くの川で魚を捕まえて遊んだり、近所のおばさんに木の実のブローチ作りや編み物を教えてもらったりと、身近な自然に触れる機会は多かったです。当時の暮らしの中にあった楽しさや好奇心が今の自分の土台になっていると思います。ちなみに『緑』という名前は本名ですよ(笑)。祖父がつけてくれたものですが、まるで私の活動を予見していたようで、今ではすごく気に入っています。市民活動としての最初のきっかけは、10年以上前になりますが、娘が通う小学校に富士自然観察の会現会長の山田高(たかし)先生が校長として赴任され、出会ったことです。当時私はPTAの役員で、写真が趣味だったこともあり、山田先生が創設された『原田湧水クラブ』というこどもエコクラブの活動記録写真を撮るお手伝いをすることになりました。先ほどから何度か触れているこどもエコクラブというのは、全国にある子どもの環境活動クラブの総称で、富士市内には現在20以上の団体があります。富士市は全国的に見ても環境学習が活発な自治体のひとつなんですよ。娘と一緒に身近な動植物と触れ合ううちに、親の私もすっかり夢中になってしまって。山田先生に観察のポイントを教わったり、大学の勉強会に参加したりと、どんどん熱が入っていきました。その後、富士自然観察の会の運営委員に推薦され、静岡県の環境学習指導員や富士市の環境アドバイザーにも就任するなど、活動が広がりました。」



自然と
親しむ活動では、地域の子どもたちとの関わりを特に重視しているそうですね。

 「子どもの好奇心は旺盛で、自然の中で自ら工夫して遊んだり、大人が思いもよらない疑問を持ったり、見ているこちらの方がワクワクします。当初の予定通りに進まないこともありますが、それがまた楽しいところで臨機応変に接しています。もちろん安全第一ですので事前の下見や準備はしっかりと行いますが、自然は見ているだけでは面白くありませんし、知識だけ伝えても頭には入ってきませんよね。実際に触れて、感じて、関わることが大切です。『最近の子どもはゲームばかりで…』という声も聞きますが、決してそんなことはありませんよ。草笛作りや植物の茎を使った槍投げ、昆虫探しなど、素材と機会さえあれば子どもは自然の中でいくらでも遊べます。川の土手を歩く自然観察会では、子どもたちがすぐに遊びを見つけて立ち止まってしまうので、1時間でスタート地点から5メートルしか進まなかったということもありました(笑)。子どもたちがあまりにも楽しそうに遊ぶので、木の実や葉っぱなど自然の素材を使ったおもちゃで遊ぶ『昭和あそび研究会』というサークルを今年から立ち上げる予定です。自分の子育てが一段落した私としては、子どもたちと関わることでこちらの方が癒されたり、パワーをもらえたりするので、つい張り切り過ぎてしまいます(笑)。」



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小学1年生の自然観察会にて
(取材協力:富士市立岩松小学校)



自然観察や遊びでの専門分野はありますか?

 「富士自然観察の会には現役の教員や動植物に関する詳しい知識を持った方もいますが、私自身は単に自然が好きで参加しているので、これといった専門分野はありません。でも逆に、専門的なことが分からない気持ちが分かるというか、一般の人に近い感覚で親しみやすい話ができると思います。地域の講座などでよく取り上げるのは、木の実を使った雑貨作りや、タマネギの皮やドングリを使った草木染め、食べられる野草を使った料理やお茶作りなどです。子ども向けにはたこ焼き風にアレンジした野草焼きや野草ピザ、おもちゃとして遊べる教材や被り物などを使うとウケがいいですね。一般的に知られた山菜に限らず、ヨモギ、ドクダミ、ツクシ、ノビル、カラスノエンドウなど、食べられる野草は身近にたくさんあるんですよ。野草の中には人体に深刻な害を及ぼすものもあるので、何でも食べていいというわけではなく充分な知識が必要ですが、自分で採ったものを食すという楽しさは体験してみると分かります。最近では趣味で野草を採って食べている俳優の岡本信人さんが有名ですが、都会にも食べられる野草はたくさんあります。いつか私も食べられる野草を探して歩くイベントを東京のど真ん中でやってみたいですね(笑)。私は少しバカバカしいことをして楽しむのが好きで、その上でみんなを驚かせたい、楽しんでほしいというサービス精神で活動しているので、自分が面白いと思ったことはどんどん試して取り入れるようにしています。」




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浮島ヶ原自然公園でのセイタカアワダチソウ
駆除の様子
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富士自然観察の会現会長の山田さん(右)と
小澤さん
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タンポポの特徴を楽しく説明するための被り物
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子どもたちが作ったたこやき風の野草焼き



富士市周辺の自然で、おすすめの場所はありますか?

 「富士山のように象徴的な大自然も素晴らしいですが、工業都市のイメージが強い富士市内の身近なところにも、自然の魅力はたくさんあります。特に富士市は公園が充実しているので、自然遊びには最適です。浮島ヶ原自然公園は別として、個人的におすすめなのは広見公園ですね。もともと丘陵地だった地形をそのまま活かして整備されているので、面白い植物に出会えます。あまり知られていませんが、広見公園には絶滅危惧種のキンランや要注目種のアマナなどが自生している場所もあるんですよ。普通の公園の片隅でひっそりと生きている貴重な植物を、みんなで守っていきたいですね。他にも富士川の周辺や丸火自然公園など、それぞれの環境によって特徴のある自然が数多く残されていて、市民が気軽に親しむことができるのも、このまちの魅力だと思います。」




   自然と触れ合うことは、
   地域や人と関わること
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広見公園に咲くキンランの花



これからの活動目標や伝えたいことがあれば、お聞かせください。

 「『自然を守る』という言葉の意味はさまざまですが、保護のための柵を作って人間の生活と自然を隔ててしまうのではなく、これからは『共生』という考え方がいっそう大事になると思います。浮島ヶ原自然公園のサワトラノオも、日光を遮る葦が周りに多すぎると生育できません。昔から地元の農家の方が冬場の畑の霜よけに使う葦を定期的に刈ってくれていたことで、絶滅を免れて生き残ったんです。人間の手を適度に加えて、身近にある自然を衣食住に無駄なく用いる里山のような暮らし方が、多くの動植物にとって理想的なのかもしれません。また私としては、身近な自然の魅力を知ってほしいのはもちろん、自然を介した人と人とのつながりを作りたいという思いが強いです。自然と触れ合うことは、地域や人と密接に関わることにつながります。過去に自然観察会に参加した子どもたちに感想を聞いてみると、自然に関する知識よりも、そこで友達ができたことや地域の人に優しくしてもらったことが強く心に残っているんですね。また自然を観察した経験から、いろんな角度から物事を見る感覚が身についたという声も聞きます。小さな頃から身近な自然や地域との関わりを持つことで、ふるさとへの愛着や誇りが生まれて、その素晴らしさを知ることにもつながります。特に子どもたちに対しては、いつか社会に出て地元を離れることになっても、何かあった時には心の拠り所になるような体験や記憶を、これからも楽しく、私らしく、伝えていきたいと思っています。」



    



 FacetoFace114top12 小澤 緑

富士自然観察の会 副会長

富士市出身・在住

おざわ・みどり/三人姉妹の次女として富士市田子の浦地区に生まれる。結婚・出産・育児を経た2001年、PTA役員を務めていた富士市立原田小学校でこどもエコクラブ『原田湧水クラブ』の創設・運営に携わる。身近な自然の魅力を知り、環境活動や観察会に娘とともに参加。翌年『富士自然観察の会』の運営委員に推薦され、その後も活躍の場を広げながら現在に至る。富士市こどもエコクラブサポーター連絡会会長、富士市環境アドバイザー、静岡県環境学習指導員をはじめ、地域やPTAの活動、読み聞かせ団体でのボランティアなど、多方面で積極的な取り組みを続ける。



    



富士自然観察の会】

富士市内を中心とした自然観察会の開催や自然の調査・研究・保護活動、会員同士の親睦などを目的とした市民団体。現会長の山田高氏らが中心となり、1985年に設立された。現在は100名以上の会員と約20名の運営委員からなる。

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◆ 公式ウェブサイト(浮島ヶ原自然公園サイト内)
  http://ukishimagahara.net/fujisizen.html

メールアドレス
 fujishizen@ukishimagahara.net

富士自然観察の会では会員を随時募集中です。年齢・性別・経験などは不問。入会後の年会費は2,000円(高校生以下1,000円)。見学は自由。詳しくは浮島ヶ原自然公園の管理棟、もしくはメールで直接お問い合わせください。



    



浮島ヶ原自然公園】

1983年に行われた富士市域自然調査の際、環境省版レッドリストに記載された絶滅危惧種の多年草・サワトラノオが発見されたことをきっかけに、貴重な湿原の動植物保護・保全を目的に富士市が土地を取得し、2010年に開園した公園。2015年には「浮島ヶ原のサワトラノオ群生地」として富士市指定天然記念物にも指定された。管理棟の多目的室には園内の動植物の写真が展示されており、自然観察会や自然体験イベントを随時開催するなど、広く市民に向けた環境教育の拠点としても、その役割が期待されている。

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所在地:富士市中里2553-8
開園時間:9:00~17:00 
(富士自然観察の会によるガイドは土日祝10:00~15:00)
TEL:土日祝 0545-31-0330 (公園管理棟)
    平日  0545-55-2793 (富士市みどりの課)
利用無料 無料駐車場あり(35台)
http://ukishimagahara.net/
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