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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.109)

今月のトップインタビュー



  町とより添う、という仕事

  富士市北部地域包括支援センター 保健師  金澤 公美  



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 超高齢社会を迎えつつある日本において、老後の大きな不安であり、社会全体の課題でもある、認知症。折しも今年は声優の大山のぶ代さんが認知症で闘病中であることが公表され、話題となった。『ドラえもん』のキャラクターそのまま、いつも明るく元気な大山さんのイメージとのギャップに戸惑いを感じた人もいれば、その一方で、夫の砂川啓介氏のコメントや、発症後に撮られた大山さんの笑顔の写真などを通じて、認知症に対する新たな認識や学びの機会を得たという人もいることだろう。
 今回紹介する金澤公美さんは、富士市一色にある富士市北部地域包括支援センターに保健師として勤務している。地域のニーズに対する橋渡し役として、人・制度・施設など、さまざまなものを適切なところにつなぐことを仕事とする金澤さんだが、その中でも、過去に自らも家族の一員として経験した認知症に関する啓発活動には特に思い入れがあるという。地域の人々を地域で支えるという健全で安定的な社会の実現には、金澤さんのような感性と行動力を持つ人材が欠かせない。とにかく明るい「おせっかい」こそが、地域をつなぎ、潤していく。




  地域の人の「知った顔」になる



 まずは地域包括支援センターについて、教えてください。

 「全国各地に設置されている施設で、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーという3職種の専門スタッフがチームを組んで活動しています。富士市内には現在7ヵ所のセンターがあり、行政からの委託を受けた社会福祉法人が運営する形で、それぞれの施設周辺のエリアを担当しています。目的としては、主に65歳以上の高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるように、保健・福祉・医療などの分野でさまざまな機関と連携して個別の支援を行いながら、住民同士が地域で支え合う仕組みづくりにも取り組んでいます。また地域の新聞販売店などと連携した『富士市地域高齢者等見守り支援ネットワーク事業』では、各世帯の異変に気づいた民間の業者さんからの通報を受けて、安否の確認に訪問するなど、
孤立しがちな地域住民をケアできるように努めています。」



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富士市北部地域包括支援センターのスタッフの皆さん



 金澤さんの仕事の具体的な内容は?

 「私は保健師ですので、主な仕事は介護予防に関するものです。以前は看護師として総合病院に勤務していましたが、医療の充実以前に、病気やケガにならないように予防することも大切だと考えるようになったことが、保健師に転職した動機でした。保健師の仕事は本来、赤ちゃんから高齢者まで、すべての地域住民の健康管理に携わることですが、地域包括支援センターでは主に65歳以上の高齢者を対象としている点で、行政に所属している保健師とは少し異なります。相談内容は介護保険の申請に関することから、認知症、虐待、消費者被害、家族関係や経済的な問題など、幅広いものです。直接相談に訪れるのは悩みを抱えたご本人をはじめ、その家族や民生委員の方、地域の高齢者が利用するサロンのボランティアの方など、さまざまです。家族の誰かが相談できる状況であればまだしも、最近では認知症の親と障害を持った子どもの家庭など、助けを求めることすらできないまま深刻な状況に陥ってしまう場合があることも問題になっています。相談についてはその場ですぐに対応できることもありますし、後日家庭訪問を行ったり、適切な機関や制度を紹介して支援の手をつなぐこともあります。また介護予防教室や地域ケアの関係者を集めた会議なども開催しています。いずれにせよ、私たち自身が積極的に地区の会議やイベントに顔を出して、住民の皆さんにどれだけ顔と名前を覚えてもらえるかが重要になります。相手はあくまでも人ですし、特に高齢者の方と関わる場合、少しでも見覚えのあるスタッフやその間に入ってくれる近所の方がいることで、安心感を持ってもらえると思います。私の勤務するセンターには事務職を含めて6人のスタッフがいますが、地域ごとの担当者を決めることで、地域と人により添えるようにしています。」



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【左】介護予防教室の体操では金澤さんも参加者も笑顔になる
【右】地域ケア会議では関係者同士の連帯感の醸成が必要不可欠



 人それぞれの状況や悩みを把握して対応していく、大変な仕事ですね。

 「試行錯誤の毎日です。元々看護師を目指したのは高校生の頃で、がんで亡くなった母のお見舞いで何度も病院を訪れる中で、病室にいるだけでなぜか心がホッとするような看護師さんに出会い、自分もこんな風に人を安心させられる仕事に就きたいと思ったことがきっかけでした。ただ、看護師は基本的に弱っている人を助けることが仕事ですが、保健師は少し違います。最初の頃はとにかく優しくすることが仕事だと勘違いしていて、私が代わりになんでもやってしまうことで、かえってその方の自立や意欲を妨げてしまうという失敗も経験しました。どうにもならないほど困難な状況にある時には全面的な支援が必要ですが、なるべく客観的にその人の状態を見て、他のスタッフとも相談しながら、支援の担い手を少しずつ家庭や地域にバトンタッチしていくことで、継続的な自立を促していくということを心がけています。」



  認知症は ひと事じゃない



 金澤さんは認知症に関する啓発活動にも力を入れているそうですね。

 「認知症は誰にでも起こり得る脳の病気によるもので、85歳以上では4人に1人にその症状があるといわれています。最近では生活習慣病としての認識も広がってきて、若い人にも関心を持ってもらいたい問題です。記憶障害や認知障害から不安に陥り、その結果、対人関係を損なったり、家族が疲れ切って共倒れしてしまうことも少なくありません。ただ、周囲の理解や協力があれば、尊厳ある穏やかな暮らしを続けることは可能なんです。実は私も、子どもの頃から同居していた祖父母が二人とも認知症を患って、家からいなくなった祖父を探し回ったことが何度もあります。元気だった家族が理解できない行動をとったり、それが原因で家族間の空気が悪くなったりすることは、子どもながらショックだったことを覚えています。当事者としての経験や思いが現在の仕事に活かされている部分もありますが、振り返ってみると、どうしてもっと自分の家族に優しく接してあげられなかったのだろうという後悔の気持ちもあります。認知症の人は何も分からない、自分が認知症であるという自覚がないというのは大きな間違いで、誰よりも不安で苦しいのは本人ですし、嬉しい、楽しい、悲しいといった感情はちゃんと残っているんです。『徘徊』と呼ばれる行為にも、本人にはきちんとした目的意識があって、現在の時刻や自分がどこにいるかなど基本的な状況が把握できなくなる見当識障害などによって、それが正しく実行できないだけです。認知症の人を社会の片隅に無理やり閉じ込めるのではなく、周囲の人々が正しい知識を持って、認知症の人が地域の中で普通に暮らしていけるための具体的な手だてを知ることが何よりも大切なんです。」



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看護師や保健師を目指す実習生に対するレクチャー



 『認知症サポーター養成講座』について教えてください。

 「『全国キャラバン・メイト連絡協議会』という組織が中心となって、自治体や全国規模の企業・団体などと共催で講師役となるキャラバン・メイトを養成しています。そこで養成されたキャラバン・メイトが自治体事務局などと協働して開催するのが『認知症サポーター養成講座』で、地域住民や企業、学校向けに広く開催されています。この約90分間の講座を受けた人が『認知症サポーター』となりますが、その後何か特別なことをするわけではありません。認知症について正しく理解して、偏見を持たず、認知症の人やその家族の応援者になってもらうことが目的です。認知症の人は今後必ず増えてくるはずです。認知症や障害を抱えた人は施設や病院にいるというイメージが強いかもしれませんが、国の方針として、そのような人々を地域全体で支援していくべきだとする『地域包括ケア』という考え方があります。実際に軽度の認知症の人は地域の中でたくさん暮らしていて、どこか距離を置いて見られてしまうという風潮や偏見はまだまだあると思いますが、必ずしも施設や病院に入れるのではなく、なるべくその人が住み慣れた町に住み続けられるようにすることが大切だと思います。『認知症サポーター養成講座』はそういった環境を少しずつ整えていくための全国的な取り組みで、富士市でも定期的に開催されていますので、関心のある方は市役所の介護保険課などに問い合わせてもらえればと思います。」



  まずは、近所を見渡すことから始めよう



 金澤さんが理想とする地域社会はどのようなものですか?

 「保健師の立場としては、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで社会保障費が急増する、いわゆる『2025年問題』を控えて、予防という観点から運動や社会的交流を地域で推進する取り組みを行っていますが、こういった流れがもっと深まればと思います。福祉の業界ではよく使われる表現ですが、理想的なのは『サザエさん』のまちですね。老若男女を問わず、地域の誰もがお互いのことを知っていて常に気にかけているという、少しおせっかいな社会です。タラちゃんが一人で裏のおじいちゃんの家に遊びに行くことも、勝手口から酒屋さんが入ってくることも違和感がないですよね(笑)。施設や制度など、ハード面の整備だけでは、どうしてもその狭間に入って救い出せない人が出てきます。そこで登場した地域包括ケアという考え方は先進的だといわれますが、決してそんなことはなくて、昔は当たり前に存在していたものなんです。身近に認知症や障害を抱えた人がいなくても、『そういえば、あそこには誰が住んでいたっけ?』という家があれば、夕食の席で家族の話題にするような気軽さで、ご近所にも関心を向けてもらえると嬉しいですね。地域包括支援センターのスタッフとしては仕事の性質上、地域のさまざまな人の人生に触れ、時には深く入り込みます。大変な仕事ではありますが、専門的な知識や経験以上に大切なことは、普通の生活者の感覚を持ち続けることだと思っていますし、だからこそこの仕事を続けていられるのかもしれません。相談に訪れる際の漠然とした不安や、家族だからこそ感情的になってしまうジレンマなど、皆さんそれぞれに複雑な思いはあると思いますが、別に立派な人間が待ち構えていて説教をするわけではありません。相談者の方は匿名でも受け付けますので、何か困りごとがあればお近くの地域包括支援センターに気楽に足を運んでもらえればと思います。」



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認知症サポーター養成講座で講師を務める金澤さん




    



  金澤 公美

  富士市北部地域包括支援センター 保健師

  1978(昭和53)年9月8日生まれ
  静岡市出身・富士市在住

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かなざわ・くみ/静岡東高校、静岡県立大学看護学部を卒業後、看護師として静岡県立総合病院に6年間勤務。医療の最前線で働く中で病気の予防や健康維持の重要性を感じ、転職を決意。保健師として静岡市内の地域包括支援センターに勤務しながら福祉業界のノウハウを学ぶ。2008年、結婚を機に富士市へ転居。富士市北部地域包括支援センターの運営を受託する社会福祉法人秀生会の職員として勤務し、現在に至る。地域に根ざした相談業務・家庭訪問・出張講座などに加え、医療職の知識や経験を踏まえた立場で後進の育成にも精力的に取り組む。5歳の長女を持つ一児の母。




    



    富士市内の地域包括支援センター

●富士市東部 地域包括支援センター 【担当地区:須津・浮島・元吉原】
  富士市増川新町12-1  TEL:0545-39-1300

富士市吉原中部 地域包括支援センター 【担当地区:神戸・富士見台・原田・吉永・吉永北】
  富士市比奈1481-2  TEL:0545-39-2700

富士市北部 地域包括支援センター 【担当地区:大淵・青葉台・広見】
  富士市一色218-10  TEL:0545-23-0303

富士市鷹岡 地域包括支援センター 【担当地区:鷹岡・天間・丘】
  富士市久沢475-1  TEL:0545-30-7062

富士市吉原西部 地域包括支援センター 【担当地区:今泉・吉原・伝法】
  富士市国久保1-11-36  TEL:0545-30-8324

富士市富士北部 地域包括支援センター 【担当地区:岩松・岩松北・富士駅北・富士北】
  富士市本市場新田32-5  TEL:0545-66-0115

富士市西部 地域包括支援センター 【担当地区:富士駅南・富士南・田子浦】
  富士市横割本町2-17  TEL:0545-65-8839

富士市西部 地域包括支援センター 富士川支所 【担当地区:富士川・松野】
  富士市岩淵137-1  TEL:0545-81-4820


富士市高齢者地域包括支援センター(富士市役所4F 高齢者介護支援課)
   TEL:0545-55-2951




    



    富士市 地域高齢者等見守り支援ネットワーク

FacetoFace109top9 富士市と富士市内の新聞販売店による協定に基づき、星野新聞堂は2011年より、高齢者世帯の異変などについての情報を共有する『富士市 地域高齢者等見守り支援ネットワーク』に取り組んでいます。
 毎日2回の配達業務を通じて、「新聞が溜まったまま」「洗濯物が干したまま」「電気がついたまま」などの異変に気付いた際、その地区を担当する地域包括支援センターに通報します。同センターは保健師や看護師、社会福祉士などの職員を現地に派遣して安否確認を行い、状況に応じて必要な手段を講じます。


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