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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.99)
今月のトップインタビュー

  ミニチュア線路は続くよ、
        どこまでも



          フジレールクラブ 代表  神田 隆文


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 鉄(てっ)ちゃん――。いわゆる鉄道ファン全般を指す言葉だが、最近ではかなり一般的な表現となっている。鉄道に関する趣味が多様化し、インターネットによる情報収集や発表の場が広がったこともあり、認知度が高まっているのだろう。そこにはどんな世界が広がり、どんな楽しみ方があるのか。その答えは当事者に聞いてみるのが一番だ。
 今回紹介するのは鉄道模型をメインとした鉄道愛好家サークル『フジレールクラブ』の代表を務める神田隆文さん。表紙の写真をもう一度ご覧いただきたい。映画『鉄道員(ぽっぽや)』を彷彿とさせる旧国鉄時代の制服に身を包んだ神田さんの背後には、岳南電車が所有する昭和40年製造のED40形電気機関車という、博物館級の稀少な車両が控える。この写真だけで神田さんのマニア度は察するに余りあるが、今回の主題はコスプレではなく、あくまで鉄道模型だ。
 神田さんの趣味において特筆すべきは、それが個人の悦楽だけに留まらず、長年の継続を経て仲間や地域社会に派生、その楽しさや価値を提供、共有できる域にまで達しているという点だ。また、それができるだけの人柄や人望を神田さんが備えていることにも注目すべきだろう。知る人ぞ知る鉄道模型の世界と、その先にある、子ども達に向けた神田さんの熱い思いに触れた。





 趣味とは自分自身が楽しむもの
 それを他の人にも楽しんでもらえたら、最高


 神田さんが鉄道に興味を持ったきっかけは?

 「小さな頃から鉄道が身近にあったということが大きいと思います。裕福ではなかったので、鉄道のおもちゃを買ってもらうのではなく、よく親に手を引かれて、走る列車を見に連れて行ってもらいました。まだ新幹線ができる前、東海道本線に『こだま』という特急が走っていて、東京から大阪まで6時間くらいかかる時代でしたが、その車両をわざわざ見に行ったりもしました。あと、通称『ゴハチ』と呼ばれるEF58形という機関車が好きでしてね。お召し列車にも使われた有名な機関車で、重い貨物や客車を引いてゴーッと力強く走る姿がかっこ良くて。日本の大動脈である東海道本線を駆け抜けて、文字通り高度経済成長を牽引した機関車というストーリーに心惹かれますね。それと、子どもの頃は毎年里帰りで長野まで行ったんですが、朝早く出発して、岳南鉄道、東海道本線、信越本線、長野電鉄と鈍行列車を乗り継いで、丸一日かかるんです。でもそれが楽しかった思い出として、今でも強く印象に残っています。でも富士市については単純に、こんなにたくさんの駅があるまちも珍しいと思います。JRの在来線、新幹線、私鉄があって、その背景には必ず富士山があるんですから、鉄道ファンにはたまりません。さらに駅といえば、バス停の吉原中央駅やまちの駅もありますからね(笑)。」


 鉄道を見て楽しんだ幼少期から、模型を作って楽しむ少年期以降への過程は?


 「そもそも鉄道ファンといっても様々で、最近ではいろんな呼び名が付いていますよね。鉄道に乗ることが好きな『乗り鉄』、写真を撮ることが好きな『撮り鉄』、車両に関する知識を積んで研究する『車両鉄』、発車メロディや車内放送など鉄道の音にこだわる『音鉄』など、楽しみ方も人それぞれです。僕の場合は、緻密な計算の下に生み出されたものが思い通りに動くというメカニックな部分が好きで、そこから鉄道模型の道へと進みました。中学生くらいから1個100円程度の小さな部品をコツコツと買い集めたり、足りないものは自分で作ったりして、もう半世紀近くになります。特急列車がホームとの隙間スレスレを超高速で走り抜けるところを見ると、『すごい!かっこいい!』って、今でも思いますよ。小学校の卒業文集には将来の夢として、『時速500キロで走るモノレールを作りたい』と書いたんですが、これは今でいうリニアモーターカーですね。職業としては実現しませんでしたが、趣味の世界では今でもどこかであの頃の夢を追いかけている部分もあります。僕に限らず、子どもは基本的に動くものが好きです。機械的なものが動くのを観察したり、自分で作って動かしたりすることは、子どもにとって自分の世界を創造することにつながる大切な作業です。例えば、ブロックなどで乗り物を作ると、子どもは必ずその上に人形などを乗せて『ごっこ遊び』をしますが、これは大人の世界を縮小化・モデル化して、自分の世界として実現させようとする行為で、大人が趣味の盆栽の中に自分だけの小宇宙を見出して表現しようとするのと本質的には同じだと思います。」


 神田さんが代表を務める『フジレールクラブ』の活動について教えてください。

 「純粋な趣味のサークルで、規約や会費はなく、現在は12~13名のメンバーで活動しています。27年前、同じ趣味を持つ友人と二人で始めた活動がきっかけでした。新幹線の新富士駅ができる時に、100分の1の大きさで新富士駅の模型を作って鉄道と一緒に展示しようという話が出て、関係者の方々の協力もあって、それを実際に開業記念イベントで披露したんです。その後は特に会員を募集したわけではありませんが、好きなことをやっていたら、同じ趣味を持つ仲間が一人二人と増えてきて、現在に至るという流れです。隠れ鉄道ファンって、けっこういるんですよね(笑)。年に何度か出展する地域のお祭りやイベントでは、鉄道模型や周辺風景のジオラマ展示、実際に乗ることができるミニ機関車の実演走行などを行っています。子ども達はもちろん大人にも好評で、最近は公共施設などからも出張実演の依頼をいただいています。」


 模型そのものはもちろん、イベント出展やメンテナンスの手間や費用は全て持ち出しですよね?


 「費用はそれなりに掛かりますし、一度に買い集めると大変な金額ですが、僕の場合は何十年もかけて少しずつ増やしていたら、ひと財産になったという感じです。HOゲージという規格の大人向けの鉄道模型などは、全て職人の手作りで、東京の銀座にある専門店でしか手に入らないような高価なものもありますが、僕はコレクションのためだけではなく、あくまで走らせて楽しむことを目的にしているので、可能な部分は自分で作ったり、中古品を格安で買って修理したりしながらやりくりしています。また、フジレールクラブの活動はメンバーがそれぞれ自発的に行っていて、イベント出展などは1円にもならない完全なボランティアですが、個人的には仕事でも趣味でもとにかく人を楽しませること、喜んでもらうことが好きで、そのための作業は苦になりません。ただ自分が好きなことをやって、それを人にも分けているだけですので。むしろここを入り口として、多くの人に鉄道模型の魅力を知ってもらえると嬉しいです。鉄道ファンは内向きというか、趣味を通じて人間関係を広げようとはしない人も多いんですが、それはもったいないですよね。僕はよく仲間に、奥さん同士の会話で『あなたのご主人はいい趣味を持ってるわね』と言われるようにしようと話しています。決して隠れてやるような趣味ではないですし、自分の趣味が他人にとっても楽しいものになることで、身近にいる家族の理解や関心も深まるはずですから。」


 鉄道は人や物を乗せ、模型は夢を乗せている


 その他に、趣味の中でこだわっている点は?

 「昔の列車と最新鋭の列車をあえて一緒に走らせます。新旧の車両が同時に走る姿を再現できるのは模型ならではの醍醐味です。また、駅舎や周りの建物を作る時も、かなりこだわりますね。例えば、富士駅と新富士駅が一緒になった駅を作って、そこに身延線と岳南電車が直接乗り入れていたりして、こんな駅があったら面白いなという姿を具体的に作り込んでいくんです。また最近は煙たがられる工場の煙突などは、そこで働く人や産業の活力の象徴でもあると思うので、あえて大きく作って、駅の前にドーンと置いたりもします。ジオラマにLEDライトを仕込んで夜行列車の室内灯を点けると、一気に大人の世界にもなります。実際にはあり得ない設定や組み合わせでも、模型ならそれが許されますし、自分の理想や価値観を反映させることもできます。趣味は何でも同じだと思いますが、結局は自分が好きなものを自分の手で作り上げることが一番の楽しみです。逆にいえば、そのこだわりや満足は他人にとっては無意味な場合もありますが、趣味とは本来そういうものですから。駅弁のフタやキャラメルのおまけを必死に集めている人もいて、他人にとってはゴミでしかないものでも、本人にとっては本当に大切なものなんですよね。」


 現在、鉄道ブームが再燃しているといわれますが、その実感はありますか?


 「たしかに、以前よりも鉄道ファンの裾野は広がっているなと感じます。『ママ鉄』という言葉もあるように、最近は鉄道模型の展示でも、子ども以上にお母さんの方が真剣に見入っているということがあります。線路や機器の検測を行う黄色い新幹線・ドクターイエローの走行日、通過時間を狙って撮影に行くというお母さんもたくさんいるんですよ。また一方で、最近もブルートレインの廃止などが話題になりましたが、鉄道ブームの背景には変わっていくものや失われていくものへのノスタルジーがあると思います。今は交通や情報がものすごく便利になった反面、アナログなものへの憧れを多くの人が抱いているんだと思います。鉄道も元を辿れば、人が石炭を投入して火を焚いて、水を沸かして、そこで発生した蒸気の力で走っていたわけで、スイッチひとつで操作できる現代の機械とは人間の関わり方が全然違います。鉄道模型の魅力にも通じますが、調子が悪くなったり動かなくなったり、いろんなトラブルが起きることを前提として、その原因を追究して、なんとか工夫しながら動くようにするというプロセス自体が楽しいんだと思います。」


 鉄道模型という趣味に、ここまでやったら満足という「終着駅」はありますか?

 「いつでもやめられると思いながら、ここまで来ましたね(笑)。実際には子育てなどで一時中断したり、ゴルフや釣りなど、他の趣味に走ったこともあるんですけど、結局やり続けています。鉄道模型には終わりがないんですよ。レールはつないでいけばどこまでもつながって、景色は広がっていきますから。これで完成という瞬間は永遠に訪れないかもしれません。それとやっぱり、一緒に楽しめる仲間がいて、作品に喜んでくれる人がいることが大きいですね。自分自身が子どもの頃、列車を見せてもらったり乗せてもらったことが幼心に本当に嬉しかったから、今の子ども達にも同じ思いをさせてあげたい、鉄道を通じて感動したり空想したり、いろんな体験をさせてあげたいという思いが、僕にとっての一番の原動力、機関車になっているんだと思います。」




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 神田 隆文(かんだ・たかふみ)


鉄道愛好家サークル
『フジレールクラブ』代表

1956(昭和31)年8月26日
長野県中野市生まれ(58歳)
富士市神谷在住



父親の転勤に伴い、幼稚園の頃に富士市に転居。日常生活の中で岳南鉄道(現・岳南電車)や国鉄(現・JR)を身近に感じながら過ごしたことで、鉄道への興味・関心を深める。高校卒業後に上京し、放送関係の学校を経て、地元のテレビ放送関連会社や外郭団体に勤務。趣味として中学生の頃に始めた鉄道模型製作をライフワークとしている。1988(昭和63)年、東海道新幹線・新富士駅開業に伴うオープニングイベントの際に、共通の趣味を持つ友人とともに『フジレールクラブ』を結成し、現在に至る。鉄道模型の展示・運転会に加えて、実際に乗ることができるミニ機関車や鉄道に関するコレクションの展示なども行うことで、趣味を楽しむサークルでありながらも大きな話題性と集客力を持ち、富士市周辺での各種イベントへの出展要請が後を絶たない。

【ページ上部の写真】
子ども達が喜ぶ姿に目を細める神田さん。自身の幼少時代の思い出が重なる
(岳南電車・岳南江尾駅でのイベントにて)


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鉄道模型の展示は老若男女を問わず熱い視線を集める


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精巧に作られた車両や駅舎にはこだわりと遊び心が詰まっている


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富士市・吉原商店街でのイベントの様子



《フジレールクラブ出展情報》


 富士のふもとの大博覧会 2015

  日時: 5/23(土)・24(日) 10:00~16:00 入場無料
  会場: 富士市産業交流展示場 ふじさんめっせ(富士市柳島189-8)
  TEL: 0545-65-6000
  URL:
http://www.fujisanmesse.com/

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