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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.95)
今月のトップインタビュー

 現代アートで
  地域の魅力を再発見


   するがのくにの芸術祭
   富士の山ビエンナーレ 実行委員長
    谷津倉 龍三


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この秋、富士川両岸を中心としたエリアがアートに染まる。富士市・富士宮市・静岡市にまたがる形で初開催される芸術祭『するがのくにの芸術祭 富士の山ビエンナーレ』。24日間にわたって現代アート作品の制作・展示、各種イベントなどが同時多発的に展開するこの芸術祭の実行委員長を務めるのが、今回紹介する谷津倉龍三さんだ。
 現代アートの魅力を知って以来10年以上温め続けてきた、地元での芸術祭開催という壮大な夢。それを実現させる過程で、谷津倉さんが特にこだわったのは「市民主導による自発性」と「プロが創り出す価値の提供」だといえる。相容れない考え方のようにも聞こえるが、この左右の両輪は地域活性化事業全般に当てはまる要諦なのだ。事務用品やOA機器販売をはじめとする幅広い事業を行う会社の経営者でもある谷津倉さんの言葉の中には、現実性や長期的な成果を意識した視点が垣間見える。それでいて、もうすぐやって来る楽しい夏休みを待ち望む少年のような快活さとともに、地域の未来を良いものにしたいという、まごころが感じられた。だからこそ多くの賛同者を呼び、一流のディレクターやアーティストが名を連ねるに至ったのだろう。インタビューを終えてまず浮かんだのは、「この芸術祭、いずれ全国に知れ渡ることになるかも…」という幸せな予感だった。




 思い立ったら止まらない! 芸術祭をわがまちで


 富士の山ビエンナーレとは?

 「ビエンナーレというのはイタリア語で『2年に一度』という意味で、国内にも様々な芸術祭がありますが、富士の山ビエンナーレは今回が初めての開催です。実行委員会のメンバーをはじめ、各地域で開催されるイベントやアーティストをサポートするボランティアなど、運営は市民の自主的な活動が中心で、行政区画を超えた広範囲なエリアで開催する点も大きな特徴です。単に完成したアート作品を展示するだけではなく、46人の参加アーティストの多くには制作期間中、現地に滞在してもらいます。その土地の文化や歴史を感じ、地域の人々との交流を深めながら創作することで、地域の魅力を再発見するきっかけを生み、さらにそれが作品と融合することで、地域の情報が全国に向けて発信されることを期待しています。展示会場の選定にもこだわっていて、築100年以上の古民家や空き店舗、倉庫、空き地など、オーナーの皆さんのご理解・ご協力をいただいて、27会場48ヵ所を確保しました。基本的には富士駅前や入山瀬商店街など、東海道本線と身延線で移動・鑑賞ができる場所を選んでいます。また来場者が利用する交通・宿泊・飲食・お土産などによる経済効果や、長期的には参加アーティストと地元企業の出会いの場として、アートパッケージによる地場産品のブランド化なども視野に入れています。」


 具体的な見どころやポイントを教えてください。


 「滞在制作をしているアート作品については、何度か足を運んで制作過程を鑑賞したり、ワークショップなどに参加してアーティストと直接交流することもできます。また、会期中はアート作品の展示に加えて、各地域プログラムやイベント、パフォーマンスなどが随時開催されます。夜の由比港を舞台にした漁火マルシェ、行灯を照らしながらの宿場町蒲原のまち歩き、鷹岡の歴史的建造物や潤井川渓谷の散策、富士本町や富士川地区に期間限定でオープンするカフェやバー、芝川の里山を再生していくプログラム紹介など、会期中のエリア内では常に何か面白いことが起きていると思っていてください。平成の大合併などによって3市に分かれていますが、開催エリアは旧庵原郡がベースになっています。静岡と富士という中核都市の狭間にあるこの地域には旧東海道の歴史や文化、自然が色濃く残っていて、その魅力を広く発信したいという地元の方々の思いが大きなエネルギーになりました。そこにアーティストの感性が加わることで、ここにしかない、オリジナルな造形が生まれてくると思います。」


 谷津倉さんご自身が現代アートに興味を持ったきっかけは?

 「新潟県で開催される『越後妻有アートトリエンナーレ』という芸術祭に2003年に初めて訪れて、現代アートの作品に衝撃を受けたのがきっかけです。やはり古民家や空き店舗を会場にした作品が多いのですが、美術館で見るアートとは明らかに異なる独創的な世界観といいますか、言葉にするのは難しいのですが、『こんな芸術もあったのか!』と心から感動しました。また、普段は観光客も少ない豪雪地帯の山間部でこれだけの芸術祭が開けるということ自体、驚きでした。最初は遠目から見ているだけだった地元住民の方も、回を重ねるごとに積極的に関わるようになって、今では来場者に作品の説明や地域の紹介もしています。そこで外部から来た観光客との間に交流が生まれ、地域の魅力や情報が全国に拡散することで、次の開催時にはさらに多くの観光客が訪れるという仕組みは、画期的な地方観光のスタイルだと感じました。それを目の当たりにすると、『自分の地元でもこんなイベントができたら…』と考えてしまうのが人情というものですよね(笑)。」


 その思いをついに実現させたということですね。

 「アートに関して、私はあくまで観客であり素人ですから、芸術祭を開きたいと思っても、そう簡単にはいきません。まずは開催エリアや予算の規模が近いモデルケースを設定することにしました。群馬県で開催されている『中之条ビエンナーレ』です。毎回飛躍的に来場者数を伸ばしていて、地域住民と一緒になって作り上げていくというスタンスで地域活性化に結びついた成功事例としても知られている芸術祭なんですが、そこで総合ディレクターを務める山重徹夫さんとの面識を得たことがきっかけで、夢が現実にぐっと近づきました。山重さんには何度もこちらに足を運んでいただき、この地域の魅力や私たち実行委員の思いを訴え続けた結果、今回総合ディレクターとして迎えることができました。ディレクターやアーティストはそれぞれの道のプロフェッショナルですから、その仕事に対して私たちが口を挟むことはありません。そこは非常に大事なポイントで、地域のイベントだからといって内輪だけで散発的に盛り上がるのではなく、統一された方向性と基準に沿って企画されたものを、あくまでも外部に向けて発信していくことが大事だと思います。」


 人と人のつながりこそが 地域にとって一番の財産


 観客ではなく、主催する側に立つことで実感したことは?

 「正直なところ、当初は自分のふるさとで現代アートを見てみたいという単純な気持ちでしたが、それは目に見える成果のひとつであって、本質的な価値はもっと深いところにあるということが分かりました。結論をいえば、人と人が顔を向き合わせて交流する機会が生まれること。これに尽きます。まさにフェイス・トゥ・フェイスですよ(笑)プロとして第一線で活躍するアーティストとの出会いはもちろん、展示会場としてお借りする民家や商店のオーナーさん、必要な機材や車などを快く貸してくださる会社経営者や商店主さん、地域を盛り上げようと立ち上がってくれた実行委員やボランティアスタッフの皆さん、さらにはアーティストに食材や家電製品まで提供してくださる近所の方々など、富士の山ビエンナーレを通じて多くの人々が交流して、すでに私も知らないところで、それぞれつながり合っているんです。まだ会期前にもかかわらず(笑)。また、アーティストの多くは制作に入る前に地元住民との交流を求めます。その土地で暮らす人々や歴史・文化に触れて、その土地にある素材を使って、その土地で呼吸することで浮かんでくるイメージを作品として形にしたいというんです。これで実際に作品の展示やイベントが始まれば、各地から来場者が訪れてくれて、また新たな出会いや交流が生まれるはずです。そう考えると本当に待ち遠しいですし、主催者としてはやりがいを感じますね。」


 富士の山ビエンナーレを今後どのように育てていきたいですか?

 「ビエンナーレの名の通り、再来年には第2回を開催しますが、参加アーティストの公募など、今回は準備期間の都合でできなかったことや課題もあります。ただ今回は1回目ではなく0回目という意識でやっている部分もあって、どんな事業でも同じですが、まずは勇気を持って池に石を投げ入れてみることが大事です。そこからどんな波紋が広がっていくのか、今は見極めているところです。また、ビエンナーレは2年に一度でも、そこから派生したイベントなどは毎年開催してもいいと思います。地元の人に気づかれないまま眠っている魅力的な資産はどの地域にも必ずあるはずで、現代アートという刺激と外部から人が入ってくることによって、それが再発見されて、新しい息吹になっていけば嬉しいですね。それともうひとつ、私自身60歳を過ぎて、次の世代や地域に何を残せるかを真剣に考えた時、経営者の一人としては自社の事業拡大もそのひとつかもしれませんが、やはりこれから先、一番不足してくるのはコミュニティの力だと思います。そこに今回のような事業を始めたことで、地域住民同士はもちろん、アーティストや企業を含めた人と人との新たなつながりが生まれつつあります。それこそが地域にとっての財産になっていくはずで、それを次の世代に残していくことが今の私の役目だと思っています。」






 谷津倉 龍三

(やつくら・りゅうぞう)


 ■ するがのくにの芸術祭

   富士の山ビエンナーレ 実行委員長

 ■ 株式会社ヤツクラ 代表取締役


 1952(昭和27)年8月25日生 (62歳)
 
富士市岩淵(旧庵原郡富士川町)出身

 富士市入山瀬在住

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日本大学三島高校、日本大学商学部を卒業後、東京の事務用品卸問屋に勤務。その後家業である谷津倉商店に勤務。駿河青年会議所理事長などを経験し、2004年より株式会社ヤツクラ代表取締役に就任。従来から取り扱う事務用品・OA機器などに加え、てぬぐいたおる本舗事業の展開などで多角化を図る。2010年には富士市鷹岡に大学芋専門店『いもやゐも蔵』を出店し、話題を集める。かねてより構想を抱いていた富士の山ビエンナーレ事業を実現すべく、2013年12月に有志とともに実行委員会を設立し、実行委員長に就任。初開催を目前に控えた現在は、各参加アーティストや展示会場の提供先、各地域のイベント担当者との連絡など、事前の準備で多忙を極める。

【右上写真】展示会場のひとつ、富士市岩淵の小休本陣・常盤家住宅主屋にて。国の有形登録文化財にも指定されている建物と現代アートの融合は必見。





するがのくにの芸術祭  富士の山ビエンナーレ

  2014年 11月 7日 (金) ~ 30日(日)  9:30~16:30  観覧無料

富士山をそばに感じ、アートをめぐる。由比・蒲原・富士川・鷹岡・富士本町・芝川地区でアートエキシビションのほか、地域プロジェクトを展開します。
  公式ウェブサイト http://fujinoyama-biennale.com/
  お問い合わせ(事務局)  TEL : 080-3611-6162

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【上の写真】
参加アーティスト・勝木繁昌さん(香川県在住)による『航海-富士竹取物語伝説-』。約2ヵ月半もの制作期間を経て、鷹岡本町通り沿い(JR入山瀬駅より徒歩3分)に出現した巨大な作品。



まずはオープニングイベントへ!

 由比港漁火マルシェ

 11/8 (土)   15:00~20:30

秋の桜えび漁期を迎えた由比港に「富士の山ビエンナーレ」開催地の食とプロダクトが大集結!アーティストトークやスペシャルライブ、様々なジャンルのパフォーマーが集う解放区も実施します。

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