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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.93)
今月のトップインタビュー

 役者魂 ここにあり !

           劇団井桁屋 座長  
酒井 健之助



FacetoFace93top1 大衆演劇という言葉からどんなイメージが浮かぶだろう。旅一座、人情芝居、歌謡ショーといった、どことなく古き良き昭和の香り漂うノスタルジーか、もしくは華やかな舞台で歌い踊る花形役者と歓喜の声援を送る熱烈なファンの姿か。当事者に伺ったところ、どちらも正しい認識とのこと。素人でもなんとなくイメージできるということは、裏を返せばそれだけ独自の伝統芸能として、広く認知されているという証でもある。
 2年前に富士市を拠点とする大衆演劇『劇団井桁屋(いげたや)』を旗揚げした酒井健之助さんは、座長にして花形の看板役者。当然ながら、ご覧の通りの男前だ。しかし世襲や血縁関係によって構成されることが多く、全国各地での巡業が基本となるこの業界においては、まさに異端の存在。酒井さんがここに至った過程には紆余曲折があったという。なかなか直接知る機会の少ない大衆演劇の内幕も含めて、その思いを語っていただいた。

 


 宿命・挫折・そして復活! お客さんの笑顔があるから


 まずは大衆演劇自体についてお聞かせください。

 「大衆演劇の起源は江戸時代まで遡ります。歌舞伎から派生したもので、一門との血縁関係が薄く活躍の場が少なかった大部屋役者が、自分達でも何かやろうと集まったのが始まりです。お祭りなどで芝居を演じることで、広く庶民の娯楽として発展してきました。現代では『下町の玉三郎』と呼ばれた梅沢富美男さんや、『流し目王子』の早乙女太一くんなどは有名ですね。各劇団が旅役者として全国各地を移動する形で、特定の劇場を持たず、主に健康ランドやホテルの特設ステージなどで公演を行うのが一般的です。多くの劇団は完全な団体生活で、営業先から提供してもらう寮や、狭い劇場になると舞台の上で寝泊まりすることもあります。」


 酒井さんが立ち上げた劇団井桁屋も、やはり旅をしているのですか?

 「いえ、それが違うんです。劇団井桁屋はこれまでの大衆演劇の常識を覆す、地域密着型の大衆演劇を掲げる劇団で、おそらく全国初だと思います。この富士市に根を下ろして、これまでにない新しい形での地域活性化と文化の継承を目指しています。劇団員は僕を含めて11名で、大衆演劇の世界に縁のなかった未経験者もいます。男女比は半々で、平均年齢は30代半ばです。それぞれが別に仕事を持っていて、僕が芝居や踊りを直接教えることもありますが、経験者は各自で稽古を積みます。驚くかもしれませんが、全員が揃うのは公演当日の朝ということも珍しくないんです。劇団としてはまだまだ人数が足りず、子役もいないので、どうしても演出上の制約が出てしまいますが、僕の頭の中には幼い頃から身につけてきた300本以上の芝居の演目が台詞も含めて入っています。団員は随時募集中で、未経験でもやる気のある人は積極的に受け入れて、より大きな劇団に育てていきたいと思っています。」



 酒井さんご自身の生い立ちやこれまでの経緯についてお聞かせください。

 「父が大阪を拠点とする大衆演劇の劇団員でしたので、まさに生まれながらにしてこの世界にいました。遡ると曾祖父の代から役者をやっていたそうです。出身地は静岡県の島田市ですが、これはたまたま旅公演の途中で生まれた場所が島田だったということです。初舞台は3歳の時で、物心ついた頃には舞台に立つことが当たり前だと思っていたので、特に嫌だと感じたことはなくて、むしろ学校で勉強することの方が嫌でした(笑)。各地を移動するため学校はその都度変わりますし、公演があればほとんど出席もできません。今にしてみれば、きちんと学校で勉強しておきたかったという思いはありますね。親戚がやっている別の劇団に一時期移籍するなどして芸を磨いて、18歳で元の劇団に戻ってからは、祖父の芸名でもあった酒井健之助の名前を継ぎました。ところが、人気も出て仕事が順調に動き始めた21歳のある時、舞台で首を痛めてしまったんです。しばらくは痛み止めの注射を打って舞台に出ていましたが、そのうち大きな声を出すこともできなくなり、無念の思いで一度役者を辞めました。その後しばらくは舞台から離れて生活していましたが、10年以上の空白を経て、2年前に意を決して劇団井桁屋を立ち上げたという流れです。」


 長い時間を乗り越えて自らの劇団を旗揚げするに至った動機は?

 「ひとつのきっかけは東日本大震災です。役者をやっている親戚や知人が芝居を通じた被災地支援をやっていて、痛めた首の状態もずいぶん良くなっていたので、自分にも何かできることがあるのではと思いました。今はまだ劇団自体の運営が軌道に乗っていないため、具体的な支援活動には至っていませんが、今後少しずつ取り組んでいくつもりです。そしてもうひとつの動機は、亡くなった祖母の遺言です。祖父である先代の酒井健之助の名を絶やさないでほしいというものでした。祖父は戦後間もない頃に若くして亡くなっているので、どんな人でどんな芸風だったのか、僕自身はまったく知りません。ただ、いつか酒井健之助として復活した僕と一緒に舞台に上がりたいと願いながら、それを果たせないまま逝った祖母の思いに応えたいという気持ちが、復帰を強く後押ししました。」



 大衆演劇の魅力とは?

 「お客さんによく言っていただくのは『元気をもらったよ』という言葉です。実を言うと、なぜ元気が出るのか、演じている僕自身にもよく分かりません(笑)。でも高齢者施設への慰問などに行くと、おじいちゃんおばあちゃんが明らかに元気になっていくのが分かるんです。ファン層としては年輩の女性が中心ですが、一人で来られる男性もいますし、女子高生も来てくれます。芝居の人情味を味わいたい人、華やかな女形のショーを楽しみたい人、お気に入りの役者を追っかけている人と、様々です。脚本や演出は座長の考えひとつで自由にアレンジできるので、劇団ごとに個性が強く出るのも大衆演劇の特徴で、同じ演目でもそれぞれまったく違う内容になります。井桁屋の場合は曲も演歌だけではなく、ポップスやアニメソングまで幅広く使っていて、衣装や演出も派手なので、その点では年齢性別を問わず楽しんでもらえるという自信はあります。」


 芝居以外の活動や趣味はありますか?

 「静岡市のFМラジオ局にレギュラー出演させてもらっています。番組の進行役やゲストとのトークもあり、最初は戸惑いもありましたが、役者としての幅を広げる意味でもいい刺激になっています。趣味は草野球で、大会に出場して優勝するほど本格的にやっていたんですが、最近はメンバーがなかなか集まらないのが悩みです。演劇や映画鑑賞も好きですが、これは半分仕事みたいなもので、一人で観に行って台詞や演技を考える参考にしています。役者というのは、もうこれでいいという正解がない仕事なので、何事も日々勉強だと思って、与えれた機会からいろんなことを吸収できるように意識しています。」


 今後やってみたいことや目標はありますか?

 「劇団の旗揚げから3周年を迎える来年には、大きな会場で公演をやりたいと思っています。後援会も発足したので、会員限定のショーなどもやりたいですね。個人的には今の仕事の枠組みにとらわれず、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいです。漠然と考えているのは、市民参加型のお祭りのプロデュースです。歌や踊りはもちろん、いろんな分野の表現者を集めて、学生や企業とも提携しながら1年に1回くらい開催できたらいいなと。あと、これも空想の段階ですが、吉原の商店街を花魁(おいらん)や芸者姿の集団が練り歩くというイベントも面白いと思いませんか?お祭り好きな土地柄ですし、周りの住民や商店も巻き込んでいけば、きっと盛り上がるはずですよ。」



 最後に、読者に向けてメッセージはありますか?


 「率直に言うと、旗揚げした当初から感じているのは、静岡県の東部エリアでは芝居を観るという文化がまだまだ乏しいということです。それでもこの2年間でお客さんの反応もすいぶん変わってきました。ですから、とにかく芝居をたくさん観て、泣いて笑って楽しんでほしいですね。舞台の上からお客さんが泣いたり笑ったりしてくれる姿が見えると役者としては嬉しいもので、いつも『よっしゃ!』と心の中でガッツポーズしているんです(笑)。僕は公演ごとに内容を柔軟に変えていくんですが、それはルールに縛られた舞台を見せても面白いものにはならないからです。9月の公演では、今猛特訓中のギター演奏も披露するつもりです。守るべきルールはただひとつ、来てくれたお客さんを楽しませること。その哲学だけは貫きながら、これからもこの地域に大衆演劇という文化を伝え広めていきたいです。」






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 酒井 健之助(さかい・けんのすけ)


 俳優/劇団井桁屋 座長


 1978(昭和53)年2月25日生 (36歳)
 静岡県島田市出身 富士市在住

  

 
幼い頃から大衆演劇の世界に身を置き、大阪を拠点とする大日方劇団の一員として3歳で初舞台を踏む。その後別の劇団での舞台経験を経て、祖父の芸名・酒井健之助を継ぐ。花形俳優として活躍するも、21歳の時に頸椎ヘルニアを患い、2000年に劇団を去る。東日本大震災の後に役者としての再起を決意し、2012年4月に富士市を拠点とする『劇団井桁屋』を立ち上げる。座長として『復活祭』と銘打った旗揚げ公演を兵庫・東京・静岡(富士)の3会場で開催し、好評を博す。その後は日本で唯一の地域密着型大衆演劇の劇団として、静岡県東部エリアを中心に活動の幅を広げている。また個人としては先月オープンした『沼津ラクーンよしもと劇場』でのショーや、シティエフエム静岡(FM-Hi!)のラジオ番組にもレギュラー出演中。他分野の出演者との絡みに加えて楽器演奏もこなすなど、タレントとしてもマルチな才能を開花させつつある。

 ● 劇団井桁屋ウェブサイト
   http://gekidan-igetaya.jimdo.com/
 ● 酒井さんのブログ『酒井健之助のGoing My Way!!』
   http://ameblo.jp/goingmyway-igetaya/



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《劇団井桁屋公演情報》
平成26年9月21日(日) 富士市交流プラザ  (富士市富士町20-1)
【昼の部】  開場12:30  開演13:00   【夜の部】  開場17:00  開演17:30
 前売り 3,000円  当日券 3,500円  大学生・高校生 1,500円  小中学生 1,000円
 全席指定  (未就学児は膝上鑑賞に限り無料)

[チケットお申し込み・お問い合わせ先]
 富士市交流プラザ 0545-65-5523(9:00~22:00受付)
 劇団井桁屋事務局   080-5104-0481


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舞台上での酒井さんはまさに百花繚乱たる千両役者

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芝居とはひと味違う魅力を放つギター演奏中の酒井さん

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酒井さんの祖父でもある先代の酒井健之助さん

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