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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.86)

今月のトップインタビュー

  人を想う、人であれ

      彫刻家 / オール富士さん! 代表
  漆畑 勇司



 富士山の世界文化遺産登録に沸いた昨年の夏、富士市で新たな市民活動が産声を上げた。その名も『オール富士さん!』。様々な分野で富士山の魅力を発信する活動やイベントを展開し、またその趣旨に賛同した個人・企業・団体を互いに結びつけることで、富士のまちの「こころの資産」を後世に残していこうとする壮大な試みだ。
 このプロジェクトの発起人代表として先頭に立つのは、地元出身の彫刻家・漆畑勇司さんだ。富士市で芸術や文化に関心のある人なら、彼の名前を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。漆畑さんは35年間にわたって主宰する美術教室で、芸大・美大を目指す約600人もの門下生を指導し、有能な人材を数多く輩出してきた。また富士市の文化事業にも様々な形で関わり、近年では古い日本家屋を再利用した交流スペース『富士芸術村』を設立した人物としても知られている。本業の彫刻家としては広見公園やフィランセ、市内の小中学校などに人間味溢れる作品が数多くあり、周りの風景と調和しながら、訪れる人を温かく迎えている。そんな富士市を代表する文化人である漆畑さんが今回新たに取り組む『オール富士さん!』の活動について、その根底にある思いを中心に語っていただいた。



心あるまちのために、僕達ができること



 『オール富士さん!』の活動の経緯は?

 「最初のきっかけは富士山の世界文化遺産登録です。ただ、地元の盛り上がりに触発されたというより、むしろ逆で、構成資産を数多く有する富士宮市などと比べて、富士市では盛り上がりに欠けていることにショックを受けて、『このままじゃいけない!』と同じ思いを持つ知人同士で集まったというのが正直なところです。富士山や富士のまちを愛する人々に広く参加を呼びかけたところ、これまでに3回開催した全体会では計100人以上の参加者があり、今後の発展に手応えも感じています。具体的に何をやるかについては、短期・中期・長期と分けて考えていく必要がありますが、例えば今すぐできることとして、市内の清掃活動や昨年末に開催された富士山女子駅伝の沿道での応援など、すでに実践していることもあります。また長期的な計画としては2020年の東京オリンピックに合わせて、富士市で芸術をメインに据えた『アートオリンピック』の開催を目指しています。美術・音楽・舞踊など様々なジャンルのアーティストに発表の場を設けて市民との交流を図り、さらには東京オリンピックで来日した外国人観光客が富士市にも足を延ばして滞在してくれるように仕掛けていくことが狙いです。もちろんこのイベントに限らず、多くの人の意見やアイディアを集約して、行政や企業ともできる限りの連携をしながら、まちの魅力を高めるための活動を計画・実行していきたいと考えています。」

 活動の最終的な目標は?

 「何ができたら終わり、何ができないからダメというものではなくて、富士山って素晴らしいよ、富士市っていい所だよと、自信を持って人に伝えられるような誇りを、市民一人一人に持ってもらいたい。ありきたりな表現かもしれませんが、心の豊かさを育てることが究極の目標です。例えるなら、みんなでごみを拾うまちではなく、ごみを捨てるのが恥ずかしくて誰も捨てないというような、真の意味で心があるまちにしていきたいです。その点では『オール富士さん!』の活動は短時間で完結するはずがなくて、主役になるのはあくまで子ども達を含めた若い世代です。実際に若いメンバーもどんどん増えていますが、彼らの願いを実現できるような活動にしないと意味がありません。今、僕達がやっているのは次の世代に託すための地ならしのような作業です。まずは誰でも伝えたいこと、やりたいことを存分に発信できる場所を提供していくことが大切です。」

 漆畑さんご自身について、彫刻家という職業に就いたきっかけは?

 「彫刻の世界に足を踏み入れたのは高校3年生の夏休みです。それまでは小学生の頃からずっと油絵を描いていて、大学で絵画の勉強をするために予備校で油絵を習っていました。卒業旅行と称して一人でヒッチハイクしながら伊豆の堂ヶ島まで行って、夕日の絵を描いていた時、日が暮れたので野宿をしようと近くの神社を歩いていると、隣に偶然とある彫刻家のアトリエがあったんです。中を覗いていると、その人が『入ってきなよ』と声をかけてくれたので、中に入って話をしました。その流れで『じゃあお前、彫刻作ってみろ』ということになって。結局その日も次の日も、そのアトリエで彫刻に没頭してしまい、そこから人生が変わりました(笑)。作り話みたいですが本当の話で、困ったのは油絵の指導をしてくれた先生です。絵を描くための旅行から帰ってきたら、急に『大学で彫刻を学びたい』って言い出したんですから、怒るに怒れないですよね(笑)。幸いにも大学では好きな彫刻家だった佐藤忠良先生に直接教えを乞うことができ、卒業後は富士市に戻って創作活動を始めたんですが、ここでも面白い話がありましてね。現在の教室を建てる前に、プレハブ小屋の前で作品を作っていたら、そこにたまたま富士南小学校のPTA会長さんが通りかかって、『君、面白いことやってるじゃないか』という話になって。そのご縁で、当時まだ開校して間もない富士南小学校の玄関横にブロンズ像を作らせてもらえることになったんです。23歳、無名の若造にこんな大きな仕事が与えられるなんて、普通じゃあり得ないことですよ。僕の人生はまさに『棚からぼた餅人生』です(笑)。」

 その後、彫刻家としてご活躍される中で、社会活動にも積極的に参加されるようになったのですね。

 「芸術家というと、一日中アトリエにいてひたすら自分の世界と向き合っているようなイメージを持たれがちですが、僕の場合は小学生の頃から『ジュニアリーダーズクラブ』という活動を通じて、別の地区の人々とも交流を持っていたので、大人になってからもごく自然に地域活動と関わってきました。また両親の育て方も影響していると思います。とにかく差別が大嫌いで、小学5年生の時、僕が誕生日パーティーをやりたいといって、仲の良い数人の友達を招待しようとすると、『不公平なことをするんじゃない!呼ぶならクラス全員を呼びなさい。来るか来ないかはお友達が決めることだ』と、えらく怒られましてね。そこでクラスのみんなに声をかけたら、ほとんど全員が来ちゃって(笑)。それでも母は来てくれた全員分のお寿司を作ってジュースを出して、一生懸命もてなしてくれました。常に彫刻をやっていたいという気持ちはもちろんありますが、そういう環境と感覚で育ってきたので、彫刻家だろうとどんな職業だろうと、もっと芯の部分で『まずは人であれ』というか、義理人情のない世界は嫌なんです。だからついつい社会的な活動に目が向いてしまうのかもしれませんね。」

 今後の活動についてお聞かせください。

 「彫刻家や美術指導者としての活動を単なる仕事としてこなすのではなく、やはり『人を想う』ということをすべての基本に置いていきたいです。世のため人のためというと大袈裟ですが、すぐに目に見える利益や成果にはならなくても、関わる相手や地域社会を思いやりながら行動すること自体に意味があると思います。僕は芸術という分野を通じてそれを伝えてきたつもりですし、これからもその姿勢は変わりません。ただその一方で、やはり表現者として最前線で作品を創り続けていなければダメだとも思います。純粋な気持ちでアトリエに籠る時間があるからこそ、多くの仲間や教え子がついてきてくれるわけですし、自分は何もしないのに外に向かって偉そうなことだけ発信しても、誰も耳を傾けるはずがありません。今回の『オール富士さん!』の活動も同じで、『こころ・ここ』というキャッチフレーズにあるように、まずはこのまちで暮らす我々の心のあり方をみつめながら、みんなが幸せに暮らせるためにできることを、ひとつひとつ実践していきたいですね。」







 漆畑 勇司(うるしばた・ゆうじ)


 彫刻家

 富士美術研究所 主宰

 富士芸術村 村長

 オール富士さん! 代表


 1955(昭和30)年4月19日生まれ(58歳)

 富士市柳島出身・在住


 日本大学三島高校から東京造形大学造形学部彫刻科に入学。彫刻家・佐藤忠良氏に師事。1978年に卒業後、地元富士市に戻り彫刻家としての活動を始める。23歳の時に制作したブロンズ像『富士にはばたく』(富士南小学校)をはじめ、富士市内の公園や学校などには大小様々な作品が常設されている。個展・グループ展も多数開催。また美術指導者としては1979年に美術教室『富士美術研究所』を設立。同時期に静岡県立富士高校の非常勤講師となり、19年間勤務。1996年富士市文化奨励賞受賞。2004年に文化・芸術交流スペース『富士芸術村』を設立。昨年8月には市民活動グループ『オール富士さん!』を立ち上げ、代表発起人となる。

  




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漆畑さんの作品は富士市内の各所で目にすることができる。
 【左】 「和み」 富士市フィランセ (2002年・47歳)
 【中央】「愛」 広見公園 (1982年・27歳)
 【右】 「富士にはばたく」 富士市立富士南小学校
      (1979年・23歳)



【富士美術研究所】
漆畑さんが主宰する美術教室。趣味の絵画から芸大や美
大の受験対策まで幅広く対応している。園児・小学生を対象とした教室『天使の森』も含め、3歳から70歳まで数多くの生徒が通う。
 富士市水戸島本町14-10 TEL 0545-63-2417
 http://www.fujibiken.net
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【富士芸術村】
富士市大淵にある築50年以上の日本家屋を改装した文化・芸術に親しむための交流スペース。様々な分野の作家による展覧会やワークショップの企画・開催を中心に、運営委員会とボランティアスタッフの手により管理・運営されている。
 富士市大淵1516 TEL 0545-35-0509
 開村日:毎週金・土・日10:00~16:00
 観覧料:無料  http://fujiyama-art.main.jp
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【オール富士さん!】
富士山の世界文化遺産登録をきっかけに、富士山の恩恵とその麓にある富士地域の素晴しさ再認識し、後世に継承していくため結成された市民活動グループ。

《今後の活動予定》
  2/10(月) 全体総会 富士市消防防災庁舎7F大会議室 19:00~
  2/23(日) 『なんでも富士山2014』 ふじさんめっせ
        10:00からステージにて唱歌『ふじの山』を会場の皆さんと合唱

いずれも参加資格や制限はなく、活動の趣旨に賛同する人は誰でも自由に参加できる。
問い合わせは事務局まで。 TEL 0545-38-0088 (太田)

【 公式ウェブサイトやフェイスブックでも情報発信中! 】 http://allfujisan.org/


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