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トップページ > 地域情報紙 > トップインタビュー(vol.84)

今月のトップインタビュー

 ラテンの風でまちを元気に!

  富士市国際交流ラウンジ FILS(フィス)
  佐野 マリサ



 静岡県には南米出身の外国人の方が数多く住んでおり、富士市内でもスペイン語やポルトガル語の看板を出した商店などを見かけるが、職場や学校などで直接的な関わりがある場合を除けば、彼らの背景にある文化や生活に触れる機会は決して多くはない。
 外国籍市民の生活支援や国際交流活動を行う富士市国際交流ラウンジFILS(フィス)でスペイン語の通訳を務める佐野マリサさんは、南米・ペルー共和国出身の日系3世だ。来日して25年、地域活動にも積極的に参加しながら 三児の母としてこの富士市で暮らしてきた。またラテン系を象徴するような明るく社交的な人柄と、聞き心地の良いきれいな発音の日本語を活かして、様々な人と人とをつなぐ国際的な“かけ橋”にもなってきた人物だ。
 今回のインタビューでは佐野さんの活動内容に加えて、在日外国人としての地域への思いや少し笑えるエピソードなども伺うことができた。




 ペルーを知ってほしいから 



 現在関わっている活動について教えてください。

 「富士市国際交流ラウンジ(以下:FILS)でスペイン語通訳を10年間やっています。自分と同じようにスペイン語圏から来た人の手助けができればと思い、応募したのがきっかけです。その後、言葉の問題で困っている外国人の生活支援やペルーの文化を紹介する国際交流活動などにも関わるようになりました。具体的にはラジオfで外国人向けの生活情報を提供する番組のナレーション、外国籍の生徒が多い吉原小学校や富士見台小学校などを週3回訪問して、宿題や各家庭へ配布されるプリントを翻訳するなどの手助けをする外国人児童生徒支援員、日本語が分からない外国籍の人々の支援にあたる外国語通訳支援員などです。言葉の問題を抱えた外国人にとっては、ただ生活するだけでもいろんな障害があって、多くの日本人が当たり前と思うことでも、どうしていいか分からず、また相談もできずに悩んでいる場合があります。そういう人達を支援したり、お互いに交流を持つことで仲間意識や前向きな気持ちを持ってもらうことが私の役目です。」

 交流活動とはどういう内容ですか?

 「
FILSでは年間を通じて様々な国際交流イベントを開催していますが、私個人でもペルーを紹介する講演などを行っています。富士市内の子ども達が主な対象ですが、私はとにかくペルーのことをもっと知ってほしい、興味を持ってもらいたいという気持ちを来日以来ずっと持ち続けています。そのために呼ばれればどこへでも行きますよ(笑)。手描きの地図や特産品のアルパカの毛で編んだ服、日本では珍しい紫色のトウモロコシなど、いろんな物を持ち込んで、ペルーの特徴や文化について話します。大体45分くらいで話すことが多いのですが、日本の子ども達の心に何かひとつでも残ってくれればいいと思っています。それともうひとつはペルーの民族舞踊ですね。国際交流フェアや福祉まつり、あとはFILSのイベントなどで、仲間と一緒に踊りを披露しています。民族舞踊といっても専門的に習っていたわけではなくて、ラテンの人はみんな音楽が大好きなので、ペルー人ならきっと誰でも踊れると思いますよ(笑)。ただ同じペルーでも各地域差は大きくて、少し離れると服装や食べ物、家の形まで変わりますから、それぞれの踊りに合わせて、振付けはもちろん、衣装や小物もすべて自分達で手作りしています。」

 来日して25年ということですが、日本に来た経緯は?

 「母方の祖父母が沖縄からペルーに移住した日本人で、日系3世の私は特別に1年半の滞在ビザが取得できたので、当初は日本で働いて貯金をして、1年半でペルーに帰るつもりでした。一般的なペルー人にとって、日本に行くということは夢のような話で、私も渡航費用を借金して来日しました。事前に日本での職場を紹介してくれるシステムがあって、最初は栃木県の真岡市に行ったのですが、ちょうど盆休みの直前に来日したために、いきなり1週間、何も仕事がありませんでした。でもその時は盆休みの意味を知らないので、『誰も働いてないけど、日本は大丈夫なの?』と不安になりました(笑)。その後すぐに富士市の事業所に移って、それからはずっとここに住んでいます。結果的には来日して間もなく職場で知り合った日本人男性と結婚することになったので、ペルーに帰ることはなく、初めて『里帰り』をしたのは数年後で、夫と子ども達も一緒でした。」


 空手の達人はどこに !? 



 来日当初の印象的な出来事は?

 「言葉も何も分からない状態でしたので、最初の頃はたくさん失敗もしました。当時は外国人向けのパンフレットなどもなく、溜まってしまったごみをどこにどう捨てたらいいのか、さっぱり分かりませんでした。そこで近所の様子を見て回った上で、『たぶんここだろう』という場所にごみ袋を置こうとした瞬間、近所のおじさんにものすごく怒られて。当然何を言っているのか分かりませんでしたが、きっと捨てる場所か曜日が間違っていたんでしょうね。ごみは持って帰りましたが処理に困って、結局隣のお宅に行ってジェスチャーで事情を説明したところ、親切にごみの捨て方を細かく教えてくださいました。その頃の苦労や助けてもらった感謝の気持ちも、今の活動の力になっていると思います。」

 それにしても、今では本当に日本語がお上手ですね。

 「夫は当時の職場で唯一英語が話せる人でしたので、最初の頃は英語で会話をしていて、どこへ行くにも夫についてきてもらっていました。フィランセで週に1回開催されていた日本語講座などにも通って、日本語で話す割合がいつの間にか増えていったという感じです。それでも日本語だけで生活できるようになったのは、子どもが生まれてからですね。育児や周りとの関わりの中で、どうしても日本語を正しく使う必要に迫られますので。でも私自身、日本の文化が大好きで、着物や和食などにも自分から興味を持って勉強したことも大きいと思います。着物は着付けまで学んで、今では自分で着ることもできるんですよ。背筋が伸びて気持ちがいいし、せっかくこんな素敵な文化があるんだから、日本人はもっと着物を着ればいいのにと思います。」

 日本のイメージやペルーとの違いは?

 「日本は水と米が美味しい!(笑)でも来日当時はまだインターネットもなくて、教科書や本で見る程度の知識しかありませんでした。日本はモダンな国というイメージは持っていましたが、なぜか女性は着物で歩いていると思い込んでいました(笑)。また男性はみんな空手の達人だと思っていたので、最初は『えっ!誰も着物着てないじゃん!空手できないじゃん!』と驚きました(笑)。でもそういう固定概念は日本人から見たペルーも同じで、アンデス山脈のイメージしか浮かばないという人がほとんどでした。ペルーから来たと言っても分かってもらえず、『ブラジルの隣です』と言うと、なんとなく伝わるという感じでした。現在のペルーは首都のリマを中心に近代化が進む一方、一般的なイメージの通り、マチュピチュやナスカの地上絵などの世界遺産が豊富で、伝統的なアンデス文化も残っているので、観光地としての魅力に溢れた国です。南部のアレキパという町の近くには、富士山そっくりの姿をしたミスティ山という山もあるんですよ。標高はずいぶん違って、5,800メートルもありますけどね(笑)。」

 今後の活動について、また何かメッセージがあればお聞かせください。


 「子どもが大きくなって余裕が出てきたので、これからは自分の趣味の時間も増やしていきたいとは思いますが、今やっている活動は可能な限り続けていきたいです。特に
FILSはより多くの人に知ってもらい、利用してほしいです。外国人への対応が市役所の窓口だけではなく、こうして実際に集まって勉強や交流ができる場所があるのは珍しいことだと思います。また富士市で暮らす外国人のみなさんに伝えたいのは、言葉や文化の壁を言い訳にせず、積極的に地域の活動に参加してほしいということです。組合・町内会・PTAなど、日本にはいろんな地域活動があります。私にも経験がありますが、たしかに最初は不安でいっぱいでした。自分の国にないものはピンとこないし、仕事や子育てで忙しいと負担に感じることもあります。でも一人でやるわけではありませんし、日本人は何をやるにも役割分担やチームワークがしっかりしています。その活動はいつか必ず自分や自分の子どもにもいい形で返ってくるものですから、自分は外国人だから、楽をしたいからと面倒がらず、どうせやるなら楽しくやろうという気持ちで頑張ってほしいですね。そういう時こそ、ラテンのノリが一番ですよ(笑)。」




 佐野 マリサ (さの・まりさ)


 1964(昭和39)年7月29日生まれ(49歳)

 ペルー共和国リマ市出身 富士市在住


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沖縄からペルーに渡った祖父母を持つ日系3世。1989(平成元)年8月に25歳で来日し、富士市内の自動車部品メーカーでの勤務を経て、日本人男性と結婚。主婦として3人の子を育てながら、2003年よりスペイン語通訳担当として富士市国際交流ラウンジFILS(フィス)に勤務。以後、堪能な日本語と明るく社交的な人柄から活動の範囲が広がり、現在ではラジオfナビゲーター(多言語情報番組『Happiness』)、富士市外国人児童生徒支援員、富士市外国語通訳支援員など、スペイン語を母国語とする人々の生活や教育の支援に尽力している。また富士市内の各種イベントでペルーの伝統的な民族舞踊を披露するダンスグループ『ハーモニー』のリーダーを務めるなど、文化交流や地域の活性化にも積極的に取り組んでいる。



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来日して間もない頃の記念写真。日本の桜を背景にしたお気に入りの一枚。

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民族衣装に身を包み、子ども達にペルーの紹介をするマリサさん。次々と出てくる興味深いアイテムに子ども達の視線は釘づけ。


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ダンスグループ『ハーモニー』のメンバーは南米出身者に限らず、日本人やアメリカ人など多国籍だ。

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コミュニティFM局・ラジオfで放送中の多言語情報番組『Happiness(ハピネス)』収録の様子。


富士市国際交流ラウンジ FILS(フィス)

  - Fuji International Lounge for Sharing ー

 外国籍市民の支援、ボランティアとの協同、多文化共生の推進を目的として、外国籍市民の生活相談や公的文書の翻訳、日本語学習の支援、外国籍児童生徒の支援、異文化交流イベントの開催、国際交流に関する情報提供などを行う。対応言語は英語・中国語・タガログ(フィリピン)語・スペイン語・ポルトガル語で、曜日ごとに言語を設定して各言語スタッフが対応している。
 富士市には51ヵ国4,651人の外国人が在住登録されており(2012年度統計)、上位はブラジル1,567人、中国973人、フィリピン736人、韓国443人、ペルー369人の順となっている。また日本語の指導やイベントの運営、情報誌『FILSだより』の発行などには日本人ボランティアの協力も欠かせない存在となっている。FILSの活動に興味のある方は下記連絡先まで。


 FacetoFace84top7富士市富士町20-1
(富士市交流プラザ内)
TEL:0545-64-6400
FAX:0545-64-6404
開館時間:火~金13:00~21:00
     土・日  10:00~18:00
     月・祝・年末年始は休館

ウェブサイト http://www.fils.jp/

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